日本酒製造業の変遷(2004年5月号)

宮下酒造株式会社
社長 宮下附一竜

 日本酒業界の変遷を明治以降現在までの製造場数及び生産数量についての全国と岡山県の一覧表を作成してみました。 皆さんはこの表からどのようなことを考えられますか。ご意見をお寄せください。

まず、簡単に私のコメントを述べてみます。

  1. 酒造業の歴史は日本の酒税制度の歴史と不可分であることが分かります。
    • 明治新政府は財政の財源として酒税に着眼し、明治4年「清酒濁酒醤油鑑札収与並に収税法規則」を制定し、明治8年にはその整備体系化として「酒類税則」を定め財政収入の増大が図られた。
    • 昭和13年4月には「酒類販売業の免許制度」が施行された。(平成15年9月酒類小売業免許は実質的には自由化された)また、昭和13酒造年度より原料米の割当制度が実施され、清酒の生産統制が行われた。(原料米割当制度は昭和44年まで続き昭和49酒造年度より完全自由化された)
    • 平成元年酒税法の大幅改正が行われ、級別制度の廃止、従価格制度の廃止、酒類の表示基準制度の創設が行われた
  2. 日本酒の製造量は、昭和48年生産の自由化とともにピークを迎え、その後一貫して減少し、最盛期の半分を下回るほど市場が縮小している
  3. 特に岡山県は、全国の有力な日本酒の生産県であったが、生産の自由化とともに未納税取引が減少し、その地位は大幅に低下している
酒造業の変遷
酒造年度 全国 岡山県 生産数量
製造場数 生産数量(千kl) 製造場数 生産数量(kl) シェア(%)
明治14年(1881) 26,826 882 885 31,898 3.6
製造場数最高
明治37年(1904) 11,438 568 415 21,407 3.8
日露戦争の開始
大正12年(1923) 9,932 982 422 39,079 4.0
関東大震災
昭和6年(1931) 8,481 592 359 20,459 3.5
世界大恐慌
昭和16年(1941) 6,986 374 311 16,802 4.5
太平洋戦争開始
国家統制
昭和21年(1946) 3,153 157 146 5,120 3.3
終戦
昭和31年(1956) 4,073 472 188 16,435 3.5
第2次復活実施
昭和48年(1973) 3,303 1,421 149 49,699 3.5
生産の自由化
(1940年から33年間)
生産数量最高となる
平成元年(1989) 2,438 1,119 105 25,835 2.3
級別制度の廃止
表示基準制度
平成14年(2002) 2,076 633 78 7,334 1.2
現在
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