ビールの種類について(2001年11月)

宮下酒造株式会社 企画研究部

 世界のビールは非常に種類が多く、味、色、香りとバラエティーに富んでいます。 日本でも地ビールができ、いろいろなタイプのビールをみることができるようになりました。

しかし、その種類については体系的にはあまりよく知られていません。 そこで、今回はビールの種類について簡単にまとめてみることにしました。 世界のビールは銘柄数でいえば1万以上もあり、厳密に分類することは不可能ですが、一般的には発酵法、色、産地によって分類されます(表1)。

表1 ビールの分類
発酵法による分類 色による分類 産地による分類(特徴)
下面発酵ビール 淡色ビール ピルスナービール(チェコ)
ドイツ淡色ビール
アメリカビール
ジャパンビール
中間色ビール ウィーンビール(オーストリア)
濃色ビール ミュンヘンビール(ドイツ、黒ビール)
ボックビール
(ドイツ、アルコール度数6~11%)
ラオホビール(ドイツ、燻煙ビール)
上面発酵ビール 淡色ビール ペールエール(イギリス)
ケルシュ(ドイツ)
ヴァイツェン(ドイツ、小麦ビール)
ベルリーナ・ヴァイセ
(ドイツ、カクテルビール)
中間色ビール アルト(ドイツ、赤胴色)
濃色ビール スタウト(イギリス、ギネスビール、stout、強い、黒ビール)
ポーター(イギリス、porter、荷物運搬人、黒ビール)
ランビック
(ベルギー、自然酵母使用小麦ビール)

 上面発酵ビールは古代から行われている方法で15~20℃と比較的高温で発酵させ、発酵中に酵母が浮上します。 下面発酵ビールは15世紀の後半に南ドイツではじめられた方法で、5~10℃と比較的低温発酵で、発酵の終期に酵母が沈下する特徴があります。

 上面発酵ビールはエステルや高級アルコールの生成量が多く、その香味は強いものです。 下面発酵ビールは切れ味がよく、冷やして飲む傾向があります。 下面発酵ビールは主発酵終了後、貯蔵熟成(後発酵)させるのでドイツ語のlagern(貯蔵する)からlager beerといわれます。

 日本のビールの大多数は下面発酵、淡色のピルスナータイプですが、その名はチェコスロバキアのピルゼン地方に由来するものです。 弊社の地ビール「独歩」のピルスナータイプもこれに相当します。 他のデュンケルタイプ、シュバルツタイプはミュンヘンビール、ボックタイプはボックビールに相当します(表1)。

 また、弊社の期間限定ビールのヴァイツェンタイプもその名とおりドイツの小麦ビールであるヴァイツェンに相当します(表1)。 また、特徴のあるビールとしては、ラオホビール(ドイツ、燻煙ビール)、ベルリーナ・ヴァイセ(ドイツ、カクテルビール)、ランビック(ベルギー、自然酵母使用小麦ビール)があげられます(表1)。

 ラオホビールは生のブナの木などを燃やして乾燥させた麦芽を使い、独特の煙くさい香りと味がします。濃色の割には意外にのど越しがよいビールです。 ミュンヘンバンベルグ地方で生まれましたビールです。

 ベルリーナ・ヴァイセはベルリン生まれの古典的なビールで、小麦麦芽が3分の1使用されています。 乳酸菌との混合発酵のため、強い酸味があるので、赤いラズベリー・ジュースを入れるか、グリーンのくるまば草のエッセンスを入れて飲みます。

 ランビックビールはブリュッセルを中心に半径25キロ以内に存在する自然酵母を使って、その地域内でのみつくられるビールです。 原料は未発芽の小麦で、醤油蔵のような香りと特有の酸味があります。

 簡単ではありますが、ビールの種類についてご紹介しました。 世界のビールや地ビールを飲む際に、「これは表1のあのタイプのビールだな。」と思い浮かべて飲んでいただけると幸いです。

参考文献
改訂 醸造学 講談社サイエンティフィック
世界のビールベスト50 巽 一夫著 とんぼの本 新潮社

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