「戦略思考」について(2001年5月号)

宮下酒造株式会社
社長 宮下 附一竜

 今月は、まず、2、3、4月号に書かせていただきました内容を次のように、簡単にまとめてみました。

  1. 日本民族の国民酒である日本酒は、他の酒類との競争において敗退しつつある。
  2. その背景には、敗戦後、アメリカの生活様式が浸透することによって、日本人のライフ・スタイルが大きく変化し、日本文化の変容が起こったこと。
  3. 日本文化の変容が、日本酒の飲酒習慣の大きな影響を与え、日本酒の果たしてきた社会的効用を低下させ、結果として、日本酒に対する信頼感を失いかけているのではないか、ということ。
  4. 従って、日本酒の再生には、単に「モノ的価値」のみを追求するだけでなく、日本文化の見直しが必要ではないか、ということです。

 このように、日本酒の文化論を書かせていただきましたのも、体系的にものを考え、まず、全体像を明らかにする、いわゆる「戦略思考」が大切だと考えるからです。

 「戦略思考」とは、不確実な経営環境においても、目の前の課題を解決し、将来のシナリオを描ける思考のことです。 戦略思考の反対は「オペレーション思考」ですが、オペレーション思考は、手段先行型で、いかに効率的に目的を達成するかを第一とします。 戦略思考は、目的先行型で、どうつくるかではなく、何をつくるか、何をつくれば売れるのかを考え、新しいニーズを探求する考え方です。

 日本酒業界は、今まさに「危急存亡の危機」にあるというのが、私の基本的認識です。 なんとかこの難局を克服するために、真剣に今後の業界の進むべき方向性を模索しなくてはなりません。 これからの業界を考えることは、すなわち、どのような形で、若い後継者に引き継いでもらうかということでもあります。 若い世代のために、永続的に繁栄する道を発見しなければなりません。 そのためにも、体系的に筋道をたてて考え、全体像を明らかにする「戦略思考」が求められているように思います。

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