佐藤一斎

古稀を迎えて(2016年8月号)

宮下酒造株式会社
社長 宮下附一竜

 今月、満七十歳の古稀を迎えることができました。唐代の詩聖杜甫は、「曲江」という七言律詩の中で「人生七十古来稀なり」と詠んでおり、これから「古稀」という言葉が使われるようになったと聞いています。

 さて、鈴木大拙著の「禅と日本文化」の序において、西田幾多郎氏は、大拙君は「齢古稀に及んで未だその窮する所を知らない。」と述べています。「窮する」とは行きづまって苦しむこと、窮地に立つことだと思います。

 論語の中で弟子の子路が孔子に会い、「君子も亦窮することあるか。」と尋ねると、孔子は、「君子固より窮す、小人窮すればここに濫(みだ)す。」といわれたとあります。君子でもむろん困りきることはある。しかし、小人が困りきるとやけくそになるものだという意味でしょう。(論語第十五衛霊公篇)

 私も古稀を迎えましたが、窮する所を知らないという気持ちでこれからも事業に邁進してまいりたいと決意しています。

 ところで、佐藤一斎は「言志四録(三)」において「老いて学べば、則ち死して朽ちず」と書いていますが、まさに古稀を迎え、だんだんと老いていきますが、「学は一生の大事」をモットーに学び続けることによって、窮することなく我が人生を終わりたいと念願しています。これからも「衝天の志」をもってがんばりますのでよろしくお願いします。