備中杜氏について-その1-(2008年5月)

宮下酒造株式会社 企画研究部

 岡山の清酒の歴史を語る上でかかせないのが、岡山の米と水、そして、酒造りの技術集団、備中杜氏である。

 岡山県は吉井川・旭川・高梁川の三大河川が県下を南北に縦貫し、水量に恵まれ水質は軟水で鉄分等の有害物質は少なく良質で適切である。原料米は日本一と定評のある備前雄町・山田錦・朝日・アケボノ等の優秀な酒米の産地でもある。お酒は米を原料とする生産品である以上よい米を使用するのは当然としても、酒造技術がともわないと良い製品は出来ないものである。

 岡山県にはこの技術にたずさわる「杜氏」として備中杜氏がおり、古来より備中流という優秀な酒造技術を伝承しながら新しい技術を取り入れ日夜努力研鑽している。

 明治・大正時代の備中杜氏の流儀は、粗白米でしかも淡麗な飲みあきのしない清酒を造ることを特色としていた。特に製麹法としては、製麹最高温度43~45℃の高温経過をとり、仕舞仕事後8時間程度で出麹して粕量は35%以上であったと聞いている。

 しかし、これでは経済性に欠けているので大正末期から県工業試験場の小出治彦・田中公一両先生の指導により、「こしき」「かま」「煙突」の改造が行われ、加圧蒸きょうによる蒸米の処理方法が開発され、当時としては全国的に見ても優良な濃醇酒が造られるようになり、経済性も高く注目をあびたといわれている。

 また備中杜氏の大先輩の平野利八(岡山県里庄町出身)の醸造した酒銘「三角正宗」は第1回の全国清酒品評会において第1位の優等金牌を授与され備中杜氏の名声を高めた。

 この伝統は今日まで受け継がれ粕量も比較的少なくアルコール収得量が多くて、しかも酸度、アミノ酸度が少なくエキス分が多く甘口でさわりなく飲める清酒が醸造されている。

 (日本醸造協会第78巻 第10号 738-740項 岡山県杜氏(備中杜氏) 中浜昭夫筆 参考)

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