「少子高齢化社会」を迎えて(2009年4月号)

宮下酒造株式会社
社長 宮下附一竜

 いよいよ日本においても、人口の減少と高齢化社会の到来が大きな問題であり、真剣に議論される問題であるとの認識がたかまってきた。日本の2008年10月の総人口は、1億2769万2千人となり、前年比7万9千人の減少となった。現在65歳以上の人口は5人に1人であるが、2030年には65歳以上が3人に1人、75歳以上が5人に1人になるという。このように、人口の減少と高齢化社会は眼前に迫っており、「少子高齢化社会」の到来を前提にいろいろな課題を考えていかなくてはならない時期がきたといえる。

 人口の減少と高齢化は、当然に酒類の消費数量の減少をもたらすものと考えられる。酒類の消費数量は、ここ10年間で、毎年1%程度減少しており、この傾向は今後とも継続され、一層拡大するものと思われる。また、消費金額においても2007年度で約五兆円であり、かつて七兆円あった市場が大きく縮小を続けている。

 これらの傾向を考えてみれば、酒類業界の市場は将来ますます縮小し、縮小したパイを取ろうと激しい生き残り競争が展開されると予想される。従って、企業としての成長を実現し、生存競争に勝つためには、何らかの構造転換を図り、成長を実現しなくては、生存が危ういということになる。それでは、いかなる方向に構造転換を図っていけばよいのかという、方向性が今日問われているといえよう。

 そこで、早急に長期の経営戦略を構築し、これからの進むべき、新しい成長分野を探索していかなければならない。新成長分野の具体的コンセプトの確立と進出を可能にするための条件を検討していくことが、大きな課題となる。短期的経営戦略の達成をはかりながら、「少子高齢化社会」を想定して長期的経営戦略の準備を急がなければならないということである。

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