社員の結婚披露宴 祝辞(2006年4月号)

宮下酒造株式会社
社長 宮下附一竜

 只今ご紹介いただきました、新郎の勤めております宮下酒造株式会社の社長の宮下と申します。ご指名でございますので、ひとことご祝辞を述べさせていただきます。

 新郎、新婦、ご両家の皆様方、本日は誠におめでとうございます。(どうぞ、ご着席ください。)

 新郎は、平成10年に長崎大学水産学部を卒業後、当社に入社し、現在は営業課長ということで、岡山県をはじめ、全国のデパートやスーパーなどを飛び回って、活躍していただいています。当社の幹部社員として、今後一層の成長を期待しています。

 さて、何かはなむけの言葉と思い、いろいろ考えてみましたが、お二人の門出にお祝の言葉として「香りある人生」という言葉を贈りたいと思います。

 「香りある人生」とはどのような人生なのか。

 日本酒の醸造に例えてお話してみたいと思います。「香りある酒」を私たちは「吟醸酒」と呼んでいますが、「吟醸酒」には吟醸香というフルーティーな香りが付いています。精密機器で分析してみると、カプロン酸エチルや酢酸イソアミルなどのエステル成分であることがわかりました。そして、このエステル成分はメロンやバナナの香りと同じ成分であることが判明したのです。それではなぜ米から造られた清酒に果物の香りがつくのでしょうか。

 このなぞは、最近になって生成メカニズムが解明されてきました。

 お酒は酵母という卵型をした単細胞生物が、糖分を食べて、アルコールをつくることによってできます。私たち、造り酒屋は、酵母のおかげで商売ができているのですから、毎日酵母に手を合わせなくてはならないと考えています。

 それでは、なぜ吟醸酒をつくるときに、酵母は吟醸香を出すのでしょうか。

 それは、酵母が、空腹と寒さからやむをえず、何とか生き残ろうとして、つくり出すことが判ってきたのです。吟醸酒造りのポイントは「お米を白く磨くことと発酵温度を低く保つこと」にあります。お米を白く磨くとデンプンばかりとなり、酵母の栄養源が少なくなり、低温発酵によって酵母の活動が抑えられます。そうした「空腹と寒さ」という逆境の中で酵母は何とか生きるために、エネルギーをつくり出そうとするのです。その時、人間にとってすばらしい吟醸香を酵母が生んでくれることが判ってきたのです。

 さて、酵母のお話をしてまいりましたが、「香りある人生」にもどりたいと思います。私は、「香りある人生」とは、逆境や苦境に直面したときに、酵母のように環境に適応し、生き残ろうとして新しいエネルギー、すなわち、香りを出すことだと思います。

 今日の幸せなお二人にも、長い人生においては必ず苦労や困難、失敗や挫折の時がくると思います。その時に、酵母の話を思い出していただき、逆境や苦境が人間としての可能性を引き出し、大きく成長することのできる絶好の機会であるととらえていただきたいと思います。お二人が成長することができれば、周りの人々を幸せにすることができ、「吟醸香」をつくり出してくれることと思います。

 これをもちまして、私のお喜びの言葉とさせていただきます。
本日は誠におめでとうございました。

«
»