構造デフレについて(2003年6月号)

宮下酒造株式会社
社長 宮下附一竜

 私は最近、元大蔵省財務官榊原英資氏の著書「構造デフレの世紀」という本を読み大変ショックを受けましたので、本日はそのお話をさせていただきます。

 榊原さんは現在の日本のデフレは構造的なものであり、21世紀はデフレの時代になるであろうと予測しています。 その構造デフレの大きな原因として、「グローバリゼーション」と「第三次産業革命」をあげています。

 すなわち、冷戦崩壊後、中国の13億人、インドの10億人、そしてロシア、東欧などの世界人口のほぼ40%を占める人々が世界経済に再参入しており、また同時にコンピューターを中心とする技術革新によって、工業社会から情報社会に変わりつつあることが長期的デフレの原因であるというのです。 IT革命が世界最高の技術水準と世界最低の賃金水準を結びつけることになったというのです。 従って、このデフレ現象は欧米を含んだ世界的現象となる可能性が高く、むしろ現在の日本はデフレ時代の先頭ランナーであると考えられるというのです。

 1990年代は「失われた10年」と言われてきましたが、この厳しい経済環境がこれからも長期的に続くことが考えられます。私たちは今、デフレに対する認識を厳しいものに改め、デフレ克服に本気で取り組むことが必要な時にきているように思います。

 ところで、それではマクロ経済において長期的デフレが続くとすれば、そのような環境下で、私たち中小企業はどのような経営戦略をとればいいのでしょうか。 正解は個々のおかれた条件によって違ってくるとは思いますが、私は次のように考えます。

 まず、大手企業はデフレ下において、一層、低価格戦略によって競争優位を築こうとしますが、長期にわたる安売り競争は企業の体力を消耗させることになると思います。 そこで、私たち中小企業は安売り競争とは違う、別の顧客満足を追求していかなければならないとおもいます。 「作って喜び、売って喜び、買って喜ぶ」と言う言葉がありますが、メーカー、販売店、消費者の三者が喜びを共有できるような「創造的な経営」を目指し、お客様から信頼される会社にしていかなければならないと考えます。

 榊原さんの言うような構造デフレの時代を迎えているとするならば、長期的視点にたち、持続的発展を実現するために、知恵を出し、きちっと対応を準備していかなければならない時期が来たとおもいます。

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