夢二と岡山の地酒夢ひじり(2001年11月号)

宮下酒造株式会社
社長 宮下 附一竜

 今月は、岡山に生れた漂泊と抒情の天才画家竹久夢二についてお話させていただきます。 当社は日本三名園の一つである後楽園の近くに位置していますが、その後楽園にかかる蓬莱橋のたもとに夢二郷土美術館(岡山市浜2-1-32、TEL:086-271-1000)があります。 岡山にお越しの際には、ぜひお立ちよりください。 夢二のすばらしい作品をまじかに見ることができます。

 この度、夢二郷土美術館のご協力によって、夢二の絵画や版画を日本酒のラベルにすることができました。 名づけて「夢二旅情」です。

 夢二といえば美人画ですが、夢二郷土美術館の創設者松田基氏は 「モデルを使いながら、いつもモデルを決して描こうとしなかった彼の美人画のマスター・イメージは故郷のやさしき母・髪美しき姉、たまき、彦乃、お葉をひっくるめたたおやかなる日本女性の、更にいうならばさだめ悲しく、はかない女のさがであったやもしれぬ。それを業にも似て彼は描きつづけた。」と書いています。(岡山文庫、夢二郷土美術館の序文より)

 早稲田鶴巻町の絵葉書屋の“たまき”と恋におち結婚したのは24歳のときでしたが、たまきをモデルに眼の大きい、夢みるような夢二式の美人が生れます。 当社の500mlドレス瓶の純米吟醸山田錦についているしおりの「林檎」(1914年)はたまきをモデルにして描かれたものです。

 たまきとの結婚は二年にして破局を迎えますがずるずると関係が続き、3人の子をなしています。 夢二32歳のとき、彦乃と京都のおいて同棲生活を始めます。 最愛の人彦乃を胸の病で失い、傷心の夢二は詩と歌に思いをのべることが多くなったと言われます。

 その後、藤島武二のモデルお葉と同棲し名作「黒船屋」が描かれます。 当社の新製品300ml瓶純米吟醸雄町米「秋のいこい」はお葉をモデルに描かれました。 後期作品は枯淡の中にも孤愁の画境を示し、彼の代表作「立田姫」(1931年、当社新製品300ml大吟醸山田錦)、「榛名山賦」などが描かれています。

 1931年48歳でアメリカに向かい、欧州各地を巡っていますが、ベルリンで「ベルリンの公園」(1933年当社の新製品300ml瓶純米吟醸雄町米)を描いています。 欧米旅行中に体調をくずした夢二は、胸の病にかかり信州富士見高原療養所に入院したが、1934年9月1日満五十歳に十五日満たぬ生涯を終わっています。  辞世のことばは「日にけ日にけかっこうの啼く音ききにけり かっこうの啼く音はおおかた哀し」です。

 以上今月は「夢二と岡山の地酒夢ひじり」についてお話させていただきました。 当社の夢二ラベルには、詳しく作品解説をのせていますので、ぜひともご愛飲いただき、夢二芸術の世界をお楽しみいただければ大変幸せです。

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